【レビューNo.1552】世界史を創ったビジネスモデル


評価★★★★★
野口悠紀雄先生ならではの学際的ワールドが炸裂した快作と評価したい。
当時の受験生であれば当然だったが、評者は大学受験で世界史を回避していたこともあり古代ローマ史について、これまでとんと興味がわかなかった。わずかに近年映画化されたテルマエロマエでハドリアヌス帝と言う人が居るのか?というくらいの認識だった。だから、世界史が苦手だという方には、とりわけ本書の一読をお薦めしたい。
評者は、そもそもローマ帝国が(最大で)1500年も続いたことも知らなかったし、ローマ時代のコンクリートが1000年を超える耐久性があり一部は今でも使われていることも知らなかったし、ローマ帝国の皇帝はほとんどが世襲でなかった(逆に世襲の時に劣悪な時代となった)ことも知らなかった。そして、属州出身の皇帝すらいたことも知らなかった。
では、なぜ今回これまでまったく興味のなかった世界史をテーマとしたこの本を読みきることができたのか。それは著者が書いているように、本書が「歴史を学ぶ」のではなく「歴史に学ぶ」という目線で書かれているからであろう。
本書には今述べたローマ帝国の歴史に加えて大航海時代の無敵艦隊撃破までと現代における情報革命とが、書かれている。一見すると何の脈絡も無さそうであるが、著者は情報革命の時代に学ぶべきは、ローマ帝国ないし大航海時代の市場を重視したビジネスモデルなのだと言う。

著者は本書の概念を要約すると「多様性の確保」と「フロンティアの確保」だと言う。本書を読んでみて評者流の下品な言い方で表現するならば、それは「寛容」と「カネ」となるのだろう。ただ、ローマ帝国のとてつもない金持ちたちは社会還元(都市のインフラ整備などはほとんど個人の慈善事業として行われた)も凄まじい勢いで行なっていたことは覚えておいたほうがいい。それは現代の日本の老人たちが、金融資産を(主として預金で)囲い込んでしまっていることの真逆の様に評者には見えた。

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